『「学力」の経済学』

『「学力」の経済学』

本書を購入したのは2年前、あるテレビ番組で予備校講師の林修先生が本書を絶賛していたのがきっかけです。上梓から3年も経っていますが、ブログも始めたことですし、ことあるごとに読み返している本書の内容について、備忘録の意味も含め、書き留めておこうと思います。

本書は、子を持つ親なら誰でも直面するであろう悩みや疑問について、様々なデータを元に教育経済学の視点から非常に科学的に説明してくれています。5章の章題は、子どもを思うならどれも答えを知りたくなる課題です。

本書を読めば、今まで漠然と行っていた教育に対して自信を持つ、あるいは思い込みで押し付けてきた躾を見直すこととなると思います。また、日本の教育政策がいかに非効率で科学的根拠に乏しいか痛感することになるでしょう。

なかでも、「ご褒美」に関する研究結果には、考えを改めさせられました。

人間の「目先の利益や満足をつい優先してしまう」という性質を利用して、ご褒美を戦略的に与えれば良いというのです。また、ご褒美はアウトプットではなくインプットに対して与えるべきだ、ということも語られています。

どういうことかというと「テストで80点以上をとったら誕生日にNintendoSwitchを買ってあげるよ」(アウトプットに対して遠い将来のご褒美)より「ドリルを1ページ終えたら300円あげるよ」(インプットに対して近い将来のご褒美)の方が、学力向上に効果的だというのです。そもそもご褒美を与えることの良否ですが、ご褒美が「一生懸命勉強するのが楽しい」という内的インセンティブを失わせることはない、とのことで一安心です。子どもが小さい頃はトロフィーなどの方が良いみたいですが、中高生になるとお金の方が効果的というのも衝撃的です。お金を得た子は、貯蓄など堅実なお金の使い方をするようになったそうです。

子どもの褒め方についても科学的根拠を持って説明されています。

褒めて自尊心を高める育児法が多くの人に支持されていますが、「あなたはやればできる子」など、根拠なく褒めたり、努力に対してではなく、もともとの能力について褒めてしまうと、実力の伴わない自尊心ばかり高い子になってしまうとのこと。うーん、考えさせられます。

また、学力などの認知能力だけでなく、「自制心」や「やり抜く力」などの非認知能力が、将来の年収、学歴や就業形態などの労働市場における成果に大きく影響することが分かっており、これらの能力は、子どもの就学前の方がより効率的に高めることができるそうです。4歳の時に投資した100円が65歳の時に最大3万円となって社会に還元されると聞くと、自分の老後のためにも幼児教育に投資したくなりますね!

と、これほど科学的で説得力のある情報を提供してくれている著者の中室牧子さんですが、自身は子どもはいらっしゃらないということです。余計な先入観がない純粋な研究者の方が、より本質的に物事を捉えられるということでしょうか。

中室さんは「エビデンス」についての説明の中で、専門家や研究者の「意見」や「考え」は最も階層の低いエビデンスだと断じています。テレビで教育評論家や子育て専門家が「わたしはこう思う」などと語っている意見より、よほど科学的で価値がある本です。ぜひ一読ください。